全身の筋力が徐々に衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者たちの日常を描くドキュメンタリー映画「杳(はる)かなる」の上映が各地で続いている。12日、京都シネマ(京都市)で登壇した巽(たつみ)亜樹さん(45)も当事者の一人。「みんな生きている」。そう伝えたいと語る。
「靴ずれかな」
巽さんが左足に違和感をおぼえたのは、2020年3月のことだった。なんだか、足が重い。次第に靴が脱げなくなり、つま先立ちができなくなった。整形外科を回ったが、原因はわからなかった。
巽さんは感づいていた。「ALSかも」。病気のことは知っていた。否定したくて、何度もインターネットで検索した。調べれば調べるほど、自分の症状が当てはまった。10月、股関節の病気だと診断されたときは、家族で祝った。だが、それは筋力が衰えていたことが原因だった。2カ月後、神経内科でALSと診断された。
つらかったのは、病気の進行を実感することだった。この頃、外出に車いすを使うようになっていた。「あの人どうしたの」と、近所でこそこそ言われるのが気になった。友人も、離れていった。好きだった着物も、化粧品も全て捨てた。
「なんで私なんや」…